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『乙姫様は超ドS英語教官』第4話「アンタの英語が通じないのは手の位置が悪いからよ」

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『乙姫様は超ドS英語教官』第4話「アンタの英語が通じないのは手の位置が悪いからよ」

【これまでのあらすじ】
ひょんなことから竜宮城に来てしまった僕。なぜか僕には「ワサビの小袋3つ」を、物々交換を重ねた末、最終的には何者かの「命」と交換しなければならないという無茶な任務が課せられていた。48時間以内にそれができなければ数十年の強制労働をさせられるという異常なシチュエーションだ。しかもここはグローバル社会で公用語は英語。TOEIC350の僕には「乙姫様」と名乗るドSの英語教官があてがわれた。未だに何がなんだか全く判らなかった。

「ですからTOEIC350の英語力じゃ無理ですよ、いきなり英会話なんて」と弱音を吐いた僕に、乙姫は例の激烈デコピンを3発もお見舞いした。

そして「英語力は関係無い」と言い放ったのだった。

「英語力が・・・関係ない・・?」

「そうよ。アンタの英語が通じないのは手の位置が悪いからよ

「え?・・・手の位置・・・?」

「そう、手のポジションよ」

「手の・・・・・ポジション・・・・?」

乙姫は「端末を出しなさい」と言った。僕が乙姫から手渡されている例の携帯端末のことだ。「はい」僕は素直に端末を差し出すと、乙姫はささっと操作してまたまた動画をプレイした。

また僕が真正面から映っている動画だった。
しかしまた、一体どこから撮影されているのだろう。
まぁ、このヤバ過ぎる竜宮城といい、なんだかよくわからないパラレルワールドといい、僕の理解を超えていることばかりで、そんな些細なことはどうでも良く思えてきてもいるのだが・・・

乙姫が再生した画面の中には僕が人に話しかけている映像だった。
まさに先ほどまでの僕だ。
僕が「レストランとかはどこにあるのか」と街ゆく人に聞こうとして結局合計8人に殆ど相手にされなかったときの模様だった。

じっくりと画面のなかの自分の様子に注目してみた。
乙姫に矯正されたのでアイコンタクトはしっかりとできていたようだ。
ただ、まぁ・・・英語は下手だった。
というか改めて見ると、こんなに相手に伝えている情報量が少ないのかとびっくりした。当事者としては一生懸命喋ろうとしていたので必死だったし時間がたつのが早かったが、改めて第三者的に自分を眺めてみるとかなり間延びしている。

「どう?」再生を終えると乙姫が聞いてきた。
ここで何か口にしないといきなりデコピンを喰らう。

「そうですね」とりあえず「えっと・・・アイコンタクトは出来ているのですが・・・・なんだか間延びしていますね」

「そうね、確かに間延びしているわね。他には?」

「他には・・・そうですね」もう1点気が付いたことを口にしてみた「まぁ、録音の問題ですかね。あまり声が聞こえてきません。・・・まぁ、僕の声も小さいのですが」

「そう、それ」

「・・それ、ですか」

「そう。単純な話、あんたの声が小さいの」

「声が小さい・・・?はぁ・・・」なんか的確な英会話の上達のコツでも教えてくれるかと思えば、そんなことか、と少し拍子抜けした。

ビシッ!「いてっ、何するんですか!?」またまたデコピンが飛んできた。

「あんた、いま拍子抜けしたでしょ」

「え・・・はぁまぁ」

「ったく。本当に表情に考えていることがよく出るわね、あんた。あのね、アイコンタクトのときも言ったけど、人は誰しも忙しいのよ、まずやらなきゃならないのは相手の注意を引くことよ。ジョン・コッターって知ってる?」

「いえ・・・」

「アメリカの有名なリーダーシップの研究家よ。ジョン・コッターは組織のなかでどうやってリーダーシップをとればうまくいくか研究しているの」

「リーダーシップですか?」

「そうよ。リーダーシップ。でね、リーダーシップをとる際に最初にやらなきゃいけないことが、『緊急課題の認識の徹底』だと言っているわ」

「緊急課題・・・」

「そう。人を動かそうと思ったら、これから話すことがとても緊急で大切な課題だと皆にわからせなきゃならないの。人間は忙しいんだから、緊急で大切なことじゃないと動かないわけ」

なんとなく言っていることはわかる気がする。やらなきゃならないことが沢山あるなか、大抵のことは後回しにしてしまう。

「まぁ、大抵のことは後回しにしてしまいますからね」

「そう。『これは大切なことで、緊急なことなんです』と相手に伝えない限りそもそも相手は聞いてもくれないわ」

「確かに・・・」

「で、古来から緊急課題だと伝えるために最も有効とされてきたのが・・・・」

「されてきたのが?」

「・・・火事だーーー!

「え!?」火事、え、どこが?

フッと乙姫がほほ笑むと、「これよ。大声で叫ぶことよ。大声出されたら、聞かざるをえないでしょ」

「火事は・・・?」

「嘘に決まってるじゃない。大切なのは大声ってことよ」

「大声・・・ですか?」

「そう。自信を持った大きな声で話すということよ。大きな声で話すとそれは『重要なことを話しているんです』っていうサインになるというと、乙姫は声のボリュームを下げて

「こうやって小さな声で話していたらあたしが重要なことを話しているようには思えないでしょ」と言い、そこからボリュームを上げて

でも大きな声で話したら違う。あんたはアタシの話を聞かざるをえない

「確かに・・・・」実演されてさらに腹落ちした。小さい声で話されるとどうでもいいことなんだなぁと思ってしまう。一方で大きな声で話しかけられると「なんだろう」と関心が行く。

「声の大きさ大事なんですね」

「そうよ。自信のある大きな声ね。じゃぁ、もう1度動画を見なさい。今度は自分の手の動きに注目して」というと乙姫は動画を再生した。

またまた僕が映っていた。先ほど声のボリュームの話をしたせいか、やはり自分の声は小さいなと思った。そして手の動きは・・・・ほとんど動いていなかった。むしろギュッと握ってしたに垂れたままだった。

「動いていないですね・・・・ギュッと握って」

「そうよ。これまで教えてきた殆どの日本人がそんな感じよ。手をギュッと握っているか、前か後ろで組んでいる」

「まずい・・・ですか?」

「ああ、不味いわね。そんな姿勢じゃ大きな声が出るわけないでしょ

「姿勢・・・?」

「そう」というと乙姫はレッスン動画を見ろと促した。例の地上の人たちに作らせたという1分程度の英語のコツ動画だ。

「どう?」

「なるほど・・・確かに手がこれじゃ大きな声は出ないですね。それからリズムが取りづらいというのもわかりました」

動画の中では「自信のある声」で話す際の姿勢の注意点と、さらに手を動かさないとリズムが取れなく抑揚が出にくいという内容があった。
そこから「大きな自信のある声」で話すための乙姫のドS猛特訓が始まった。当然何度もデコピンされたが動画の中での注意点を確実にこなせば大きな声が出始めることが確認できた。

「これくらいでいいでしょ」

「ありがとうございます」乙姫はドSで女王様気質で本当にどうかと思う女性だが英語教官としては優秀なようだった。確かに英語力はTOEIC350で低すぎる自分だが、確実に自分のなかの何かが変わりつつあると思った。

しかし一方で48時間という限られた時間のなかでレッスンばかりやってきたら時間がなくなってしまう。
僕は携帯端末の残り時間を見た。

46:02:38

46時間02分・・・あれ?先ほどからそれほど時間が進んでいないような気がした。さらによくよく考えたら時計が止まっているではないか。

「あ・・・時計が止まっている」

「ああ、一回冒険が始まってからは、このパラレルワールドに戻ってきたときだけカウントが止まるのよ」

「え・・・本当ですか!」それは朗報だった。「じゃぁ、レッスンの時間はカウントされないということですか?」

「そうよ。一度あっちの世界に行ったあとはね。カウントされないの」

「なるほど・・・ということは、できる限りここに戻ってきて作戦をたてたり何かと時間を稼げるわけですね?」少し時間が稼げるのではと明るい光が見えた気がした。

ところが次の瞬間、ビシッっとまたまた激烈デコピンを喰らった。
「いってぇ・・・」

「あのね、アタシのパラレルワールドはアタシの崇高な教えのためだけにあるの。それ以外の目的では来させないから」

「え・・・来ちゃだめなんですか」

「当たり前じゃない。そもそも、アタシがこのブレスレットをカチっとやらなきゃアンタはパラレルワールド間の移動が出来ないんだから。アタシが『必要』って思ったときだけしか来れないの」

「なるほど・・・」やはり甘くはないようだった。

「じゃあね~」と乙姫はいうとブレスレットをカチっとやった。
次の瞬間、僕は先ほどの雑踏のなかに戻っていた。

***

携帯端末を見たら、やはり時計は進み始めていた。

あと46時間・・・・手に汗が出てきた。

早速動かなければ。
僕は一番近くに歩いていた人に声をかけようとした。
そのとき僕を追い抜こうとした女性に声をかけた。
茶色い髪の後ろ髪美人だった。

「Excuse me(すいません・・・)」

女性が振り返った。
後ろ髪だけでなく真正面から見ても美しい女性だった。
僕はレストランとかがある場所はどこかを聞いた。
英語で話しかけるというだけではなく、相手が美人ということで少し緊張具合が増したが、そんなこと構ってられない。乙姫から教わったアイコンタクト、それから大きな声を忘れずに話しかけた。
女性は普通に談話に応じてくれた。

そして指をさすと「about 10 miles from here(だいたいここから10マイルくらいね)」というとニコッと笑みを浮かべ「私も急ぐから」とばかりに立ち去っていった。

「Thank you(ありがとう)」と言いながら僕は彼女を見送った。

・・・つ・・通じた。
道を聞くという単純な行為だったが、通じた。
初めて英語が通じた、と感じた瞬間だった。
嬉しくてぼおっとした。相手が美人だったのもありポカーンとした。

「そうか、あっちの方に10マイルかぁ・・・」ははは、竜宮城にきてから最初にうれしいことが起こった。

「そっかぁ10マイルかぁ・・・」

ん?10マイル?へ?

10マイルって・・・・1マイルたしか1.6kmだから「16kmじゃんか!」

16kmって徒歩・・4時間・・・?

「まじかよ、そんな時間ないだろ」

45:58:22

時計は46時間を切っていた。

「4時間・・・走ったとしても2時間くらいか・・・?」全く見当はつかないが、2時間か3時間を今ロスするわけにはいかない。
もしかしたら、自分の聞き方が悪かったのか、と思い、さらに3人に声をかけてみた。
1人はそもそも知らないということだが、残りの2人は口をそろえて10マイルくらいと言っていた。・・・・そんなに遠いのか

45:48:32

ヤバい、無駄に時間がたつだけだ。

そのとき、後ろから誰に肩をちょんちょんとやられた。
振り返ると、亀が空中に浮いていた。

「あ・・・君はジェームス!」

僕を竜宮城に連れてきた亀だった。

「Hi, dude(ちわっ)」間違いないさっきの亀だ。相変わらず流暢な英語を喋っていた。
「do you need a ride(乗っていくか?)」亀は前のひれで自分の甲羅を指差すと、乗れ乗れとやった。
お、乗せてくれるというのか。

この空飛ぶ亀のスピードは体験済みだ。10マイルなんてほんの一瞬だろう。
ただ・・・そもそもこの亀の誘いに強引に乗ってわけのわからないまま竜宮城にきてしまった経緯があり、またこの亀に跨るのは何か恐ろしいような気も・・・

とはいえ、まぁ、既に色々なことが起こりすぎていて恐怖心も薄れていた。しかも今は急速に移動しなければならないという目的がある。

「・・・Please(お願い)」といい、僕は、亀をまたいだ。

「All right! Let’s go!(いいね、じゃ行こう!)」と言うと亀のジェームスはぐーんと地上5メートルくらいのとこに浮きあがった。

次の瞬間、ドーンとロケットスタートで飛び立った。

「ギャー!!!」相変わらずの爆速でカッとんでいった。

早すぎてきちんと見ることが出来なかったが、眼下を過ぎていったのは近未来の巨大なメトロポリタン都市のような場所だった。
ほんの1分もたたないうちにスーッとスピードがゆるみ亀は地上1メートルくらいに降下した。また雑踏のなかに舞い降りていった。

「thank you(ありがとう)」というと僕は亀から下りた。

ジェームス亀はひれでアバヨっとやるとすっと上空に消えていった。

さぁて、と見回すとそこは本当に飲食店が立ち並ぶところだった。

「ここか・・・」

ここで手に握ったわさび3袋を何か少しでも価値のあるものに交換しなくてはならない。

英語はまだまだ自信はないが、アイコンタクトをして大きな声を出せば少なくとも会話が始められることがわかっていた。
臆することはない。

僕は、さっそく町歩く人を捕まえて

「わさびはいりませんか?」と話しかけた。

2人のうち1人は全く興味を示さなかったが、もう1人は少し話を聞いてくれた。
ただ・・・・
会話がなかなか最後まで続かなかった。
途中まではなんとなく通じているのだが・・・・
あるタイミングから何というか相手が急速に興味を失っていくのだ。

44:30:18

刻一刻と減り続ける時間。
あと44時間30分。

ヤバいなぁ。

8人目で撃沈したとき。
カチッと音がなった。

またまた僕は乙姫とのパラレルワールドに戻っていた。

乙姫がたっていた。
僕はにんまりした。
そうそう8人失敗すればだいたいこの展開になるわけだ。

ビシッ「いてっ、何するんすかぁ」

デコピンも激烈に痛いがお助けガールの乙姫に会えるのでうれしい限りだ。

「あんたね、何にやにやしているの」

「いや、またお会いできてうれしいです」

「気持ち悪いわね、あんた」

「だって地獄に仏ですもん」

ビシッビシッビシッビシッ。激烈デコピンを4連発された。

「いててて、何するんですか、もう」

「地獄でもないし、アタシは仏でもないっつーの」

「すいません。でも感謝をしていまして」

それは本当の話だ。デコピンを何発をお見舞いされることには閉口するが、的確なタイミングで効率のよいレッスンをしてくれることには感謝している。

何より、この孤独な世界で唯一の話相手になってくれる相手だ。心強いし会えるだけで嬉しいに決まっている。

「・・・まぁ、その心がけはいいことね」

「ちなみに何故いつも的確なタイミングで僕を呼んでくれるんですか?」

「そりゃ、あんたのことをずっとウォッチしているからね」

「ずっとですか?」

「そう。ずっと。48時間ずっとよ」

「え・・・休憩したり寝たりしないんですか?」

「しないね。まったく。・・・そんなことはいいから。あんたの英語の次の弱点を教えてあげる」

「あ・・はい、お願いします」

あんたの英語が通じないのはアンタが王様みたいにふるまうからよ

「・・・お・・・王様??」

(つづく)