日常や仕事で、外国人と接する場面が増えていると感じる人も多いのではないでしょうか。実際、日本政府観光局の統計「訪日外客数」によると、2016、2017年と日本を訪れる外国人が累計2000万人を超えており、日常でも仕事でも英語が必要とされる場面は確実に増えています。
今まであまり使う機会がなかった英語が、急に必要になって焦った経験がある、という人も多いのではないでしょうか。
そんな時、話せる人に任せて自分は関わらないといった対応ではグローバルに通用するビジネスパーソンとは言えません。まずはビジネスの場で最低限会話が成り立つ英語を学んでみましょう。臆することなく話せるスキルを身につければ、きっと自信も湧いてくるはずですよ。
目次
ビジネス英語で最初に必要なのはコミュニケーション力
一般的に「ビジネス英語」や「日常英語」はどういった言葉を示すのでしょうか。また、何か根本的な違いはあるのでしょうか。日本人の多くは「ビジネス英語は特別」ととらえ、友人などと交わす「日常英語」と区別します。取引先との交渉や、海外出張で現地スタッフと話すなどの行為を特別に「ハードルが高いもの」と認識しがちです。
でも実は、この「ビジネス英語」という言葉は和製英語。日本独特の区別方法です。仕事で使う英語だからといって、複雑な語彙力を必要とするわけではありません。「ビジネス英語は特別」という意識を変えるべきです。
ビジネスで何より必要なものは、相手との信頼関係の構築。言葉の使い分けにこだわるより、きちんと意思を伝えて互いに理解し合い、信頼につなげることのほうが大切です。丁寧な言い回しをする、仕事によっては専門用語を使うといった最低限のツボを押さえれば、会話はひとまず成立します。学生時代の学習で得た英語力をもとに、ビジネスシーンでも英語を使いこなせるようになるのです。
一般財団法人国際コミュニケーション協会の「上場企業における英語活用実態調査」(2013年)によると、上場企業のうち、英語を使用しているのは75%、5割以上の企業が海外進出するうえで「海外勤務できる人材育成推進」を最重要視して、5割の企業がグローバル人材育成のための取り組みを実施しており、15.8%の企業で、英語力が異動、昇進・昇格の要件となっています。
こうした実情からも、今や英会話能力はビジネスに必要、といっても過言ではありません。
英語を学ぶのにタイミングは関係ない。必要に迫られた時こそ、学びの環境を整える絶好のチャンス
では、「ビジネス英語」はいつ、どのように学べばいいのでしょうか。前述の通り「ビジネス英語」は、日本独特の英語の線引き。社会人になって「仕事で英語が必要」になって学ぶことが多いでしょう。
必要に迫られて意識する英語ですから、大人になってからでは習得が間に合わないわけではありません。
例えば日本語を学ぶ諸外国の留学生のうちのほとんどは初等、中等教育で日本語に触れた経験はありません。中には社会に出てから新たなスキルを身につけようと、仕事を辞めてから学びはじめた留学生も少なからずいます。
一方、日本では英語は今や小学校から学ぶのが当たり前。シニアもほぼ中学時代には英語の基礎を学んでいます。一般の人や芸能人が、英語力を高めるため短期語学留学をするといった話も、最近よく聞くことがありますよね。
総務省の「平成28年度社会生活基本調査」によると、大人の英語学習者は約1161万人と、1位の「商業・ビジネス等」(約1778万人)、「パソコン」(約1369万人)に次ぐ、学習者の数。これからの時代、英語が必須だと感じている人は多いようです。
「言葉は慣れ」などというように、リスニングとスピーキングを繰り返しているうちに使いこなせるようになるものです。これはあらゆる言語に共通すること。それは「ビジネス英語」であっても同じです。
学ぶのにタイミングなど関係ありません。必要に迫られた今こそ、英語を学ぶ環境を整える絶好のチャンスです。
ビジネスシーンで最低限覚えておきたい英語スキル
英会話の学習とひとくくりに言っても、初歩的な英会話からビジネス英会話レベル、資格取得などさまざま。ここでは、ビジネスの場面で役立つ英会話の習得を目指す人へ向けての、学習方法をお伝えします。
いざという時に使える、覚えておくと便利な英語表現
■「丁寧な表現の心がけ」
日常生活では初対面の人にラフな言葉遣いはしません。もちろんビジネスでも、たとえ毎日会うとしても上司とあまりくだけた物言いはしませんし、クライアントならなおさら。例えば「I want to~」ではなく、「I would like to( =I’d like to ) 」を使うなど、丁寧な表現を心掛けましょう。以下に例を紹介しますので、参考にしてみてください。
「例」
丁寧な依頼や強い主張などを行う表現
(1)「Please」を使って、より丁寧に。
Can you give me your email address と言っても通じますが、こちらはくだけた言い方。
Please give me…とするだけでも、相手への敬意が伝わります。
あなたのメールアドレスを教えていただけませんか。どうぞお願いします。
(2)Let’s leave early…(早く出発しよう)と、「Let’s」を使っても相手を促せますが、より丁寧に伝えるには「We should」を。
タクシーを確保するため、早く出発すべきです
(3)I suggest that~ / I propose that~
~してはいかがでしょう/~することを提案します。という丁寧な表現。
彼女にプロジェクトへ参加するようお願いしてみてはいかがでしょう。
彼女にプロジェクトへ参加するようお願いすることを提案します。
■「慣用句やことわざを役立てる」
慣用句やことわざはビジネスシーンでも使われます。慣用句は、心情や話のニュアンスがより伝わりやすいといった利点が。また、ことわざは話し手の知性が感じられ、言葉に品格が加わりやすくなります。適切なフレーズを交えると、会話を豊かにするのに役立ちます。
「例」
【意味】:大まかな見積もり
【意味】:今月の東京での売り上げの大まかな見込みの数字を教えてください。
【意味】:遅れるほうが、やらないよりはましである。
【意味】:失敗は成功のもと。
同じようなニュアンスとして、Let’s give it a try.(試しにやってみよう)というのが普通に使えます。それより改まった表現なので、覚えておけば役立てられます。
【意味】:曲がりめのない道はない。
「待てば海路の日和あり」。仕事なうまくいかない仲間に、「諦めず続ければ、いいことかあるよ」といった励ましをする時などに使えます。
同じようなケースでは、Persistence pays off.「粘り強さは成果をもたらす。
継続は力なり」や、Patience is a virtue.「我慢すれば成功する。石の上にも三年」といったことわざも使えそう。
他にも、Every dog has its day.「どんな犬にも良い日はやってくる」といった言葉もあります。
【意味】:何事も手遅れということはない。
大人になって英会話を学ぶのも、決して手遅れではありません。
躊躇するより、No pain, no gain.「痛みなくしては、何も得ることはできない。」といいますし、You never know what you can do till you try.「やってみないと何ができるかわからない。物は試し」ですよ。
このように、ほんの一例ですが、どれも会話の幅を広げるのに役立つはずです。
知っておくと便利な3つの万能英単語
いろいろな会話に使える万能な英単語がいくつかあります。例えば基本動詞「get・have・take」は単体で訳すと、それぞれ「得る・持つ・取る」ですが、前後につく品詞によって、さまざまな意味合いを持ちます。日常から仕事の場面まで、いろんシーンで使うことができるので、事例を応用して活用してみましょう。
◎Get
- get on(乗る)
- get off(降りる)
- get out(出る)
- get up(起きる)
- I ‘m getting hungry(お腹が空いてきた)
- I got a cold(風邪をひいた、風邪にかかった)
- get (you) to do(〜に〜してもらう)
- get done(〜を済ませる、終える、仕上げる)
- get there(そこに着く)
◎Have
- have(持つ、持っている)
- have a fear(怖い)
- have a nice day(良い1日を!)
- have lunch(昼食をとる)
- have to do〜(〜をしないといけない)
◎Take
- take tomorrow off(明日は休みをとります)
- take a picture(写真を撮る)
- I took a test(テストを受けた)
- take notes(メモを取る)
- take it easy(落ち着いて、気楽に)
- take a chance(好機を生かして、モノにして)
たくさんの使い方がありますが、ほんの一例に過ぎません。物の受け取り、移動などさまざまな様子を表せることがわかると思います。
どれも多彩な使い方がある動詞ですよ。
イメトレで本番バッチリ! 英語力が問われるシーンを頭に叩き込む
海外旅行のポケット会話ブックでは「空港で」、「列車に乗る」、「買い物する」など、避けられない場面を想定した会話をまとめられています。
ビジネスシーンで英語力を発揮するためには、このように場面ごとに想定される会話をイメージすることが大切です。シーンを想定して、最低限押さえたい仕事上の会話を考えてみましょう。
例1)日本企業のスタッフ(英語に自信がない)が、初めて日本を訪れた外国人スタッフ(あるいは顧客)を応対する場面(導入としてラフに自己紹介して、会話を広げる)
出迎えて自己紹介、その後の会話といった流れが普通です。しかし、英語に馴染みの少ない日本においては、相手からいろいろ質問されても答えられないのではないか、と不安に陥りがちです。
そんな時には先手必勝! 相手より先に話を切り出したり、先に質問をしたりするなどして、こちら側主導で話の流れを作るようにしましょう。そうすれば、緊張もほぐれますし、自然とビジネスの会話になったとしても、スムーズに話を進めることができます。あらかじめ質問を考えるなどして、なるべく会話をコントロールできるよう、流れをシミュレーションしておくようにしましょう。
(ごきげんよう。私は山本孝夫です)
(ごきげんよう。山本さん。私はジョン・スミスです)
(お会いできて光栄です)
(こちらこそ。光栄です)
(飛行機の旅はいかがでしたか)
(快適でした)
(日本に来るのは、今回が初めてですか)
(はい。そうです)
(それは良かったです。あなたが日本で楽しく過ごすことを願っています。本日はおくつろぎください)
といったように、相手をリードできるような会話を想定してみてはいかがでしょうか。
■例2) 例1)の応対している相手と、よりコミュニケーションを深めるために会話を続ける場面(自分が話をリードする準備の一例)
例1)のように自己紹介を済ませ、さらに会話を広げる準備をしておくと、コミュニケーションを深めて、後々の関係構築などにつなぐためにも役立ちます。自分がリードしていく形で、少しでも会話をつなげる工夫をしておくのがおすすめです。
◎宿泊先の話題
(滞在中、どこにお泊まりですか)
(品川におります)
(どのホテルにお泊まりですか)
(品川プリンスホテルに泊まっています)
(それはいい。駅から近くて便利ですね)
などといった会話が考えられます。さらに、その先の話題も考えておけば、話す時間の長さとともにコミュニケーションも少しずつ深まることが期待できます。
考えられるのは、
◎滞在中の過ごし方の話題
(観光することは可能ですか)
(はい。少し時間を取りたいと思います。楽しみにしています)
(この辺りを動くお手伝いをしましょうか)
◎滞在中の仕事についての話題
(滞在中にどういった業務に当たるのですか)
(我が社の主力製品の日本国内での生産計画を確認します)
◎仕事場を開示して距離感を縮めやすくする心遣いの話題
(あ、これが私たちの事務所です。まずは見学していかれますか)
(ありがとうございます。でも、まずはホテルに行かなければなりませんので)
(では、今後ともよろしくお願いします)
(こちらこそ、よろしくお願いします)
前述は一例ですが、仕事の内容によっていろんな展開のさせ方を考えてみると英語力向上の一助になると思います。
英語習得、英語力向上の入口は、「聞く」と「話す」
英語学習に関するさまざまなサイトを検索すると、逆に学習することを躊躇してしまう、といった事態が発生してしまうことがあります。
例えば英語の4技能「話す」「聞く」「読む」「書く」に関する記事の中には、「話す」うえで「発音」と「文法」の正確さこそもっとも大切、という主張をしているものがあります。確かにそれも必要なことですが、こうした内容を読むと、とてもできそうにない、といった気分になってしまいます。また重要度の上位に「読み」「書き」があると、学生時代の勉強を思い出して、やる気が起こらなくなってしまうかもしれません。
でも、それはおかしいと思いませんか? 人は生まれて周囲の言葉を「聞いて」、そのうち「話す」ようになって、そのあとに「読み」や「書き」を覚えるというのが、言語習得の自然な流れです。
大人になって英語を学ぶのであっても、まず大事なのは「よく聞いて」相手の言いたいことを理解し、「しっかり話して」自分の思いを伝えることです。この2つが、英語習得あるいは英語力向上の入口であることに変わりはありません。
言語学では一般的に、言語の「正しい発音」が生成されるのは、3歳くらいの幼少期までとされています。そのため、日本で生まれて普通に日本で育ったら、ネイティブな発音で英語を話せるわけがありません。(話すうち限りなく近づくでしょうが…)自分がネイティブと同じ発音をできなくても、なんら問題ではないのです。
そして、驚くべきことに、英語ネイティブの割合は世界人口の約5〜7%に過ぎないと言われています。つまり、英語を話す人のほとんどは第2言語として英語を話しているのです。
ですから、自分の「発音がうまくない、文法が不正確」などと悩むのは無意味。さらに日本では学校教育で英語の読み書きの基礎は身につけますから、読み書き能力の向上も順を追って復習していけばいいので、心配には及びません。
他にも、英語には敬語表現はない、ビジネスには専門用語だけ覚えればいい、といったニュアンスの主張をするものもありますが、英語でも日本語の敬語にあたるような丁寧な表現はあります。日本語ほど敬語の複雑な使い方はあまりしないだけで、人間関係をよくするための丁寧な話し方は、無視できないポイントといえます。
[まとめ] 基礎を覚えたら実践あるのみ! 徹底的に「話す」・「聞く」で相手に思いをぶつける
ここまでビジネスのために英語を学ぶことについて、多くの人が気にかけそうなポイントを、事例を交えていくつかご紹介してきました。
日本人が日本語を話すときでも、言い間違えや、発音が微妙、といったことは多々ありますし、アメリカ人やイギリス人でも同じようなことがいえます。つまり母語話者(各言語のネイティブ)ですら、完全という状態はあり得ないということです。
その事実からも、言葉の学習で何より大事なのは「話そう」、「伝えよう」という「気持ち」が大切だということが言えます。
文化的背景から、日本人は正確な言葉遣いへの意識が高い傾向があります。そのため、英会話でも正確な発音や文法を意識しすぎて、話すこと自体を避けがちです。
特にビジネスの世界では、相互理解のために、とにかく「話すこと」と「聞くこと」が重要です。もちろん正確な発音や文法ができるに越したことはありませんが、それ以上に相互を理解するために、正確にできなくてもとにかく言葉を発し、相手の言っていることをよく聞いて理解しようとする姿勢がまず大切です。
聞くこと、言葉を発することは、難しいことではありません。実践してみると、むしろ「簡単」な日常行為の延長だということが、英語に触れる機会やシーンが増えるほど実感できるようになっていくでしょう。
このイングリッシュブートキャンプは、英語力向上につながる英語環境、洗練されたプログラムによって、わずか2日間の短期集中特訓で海外短期留学以上の成果を保証しています。
とにかく相手の話をたくさん聞いて、自分の意見を相手に伝える(話す)といった、言語習得の理論に裏打ちされた合理的なプログラムが構成されています。急に英語の必要性に迫られ、なおかつ十分な学習時間が取れない方には、ぜひ実践的なこうしたプログラムに参加してみることをおすすめします。
<参考文献>
www.weーj.jp
globalーsaiyou.com
translate.weblio.jp
www.tclc.web.co.jp
eikaiwaーstady.com blog.etn.co.jp
デイリーコンサイス英和・和英辞典
カタカナ語辞典
英会話ペラペラビジネス100
日本語能力検定試験第4版